同社は関東・東北で公共工事を中心に手がける従業員120名の建設会社です。技能者の高齢化が進み、3年以内に約20名の退職が見込まれる状況にありました。特定技能での採用は経営会議で承認されたものの、実務が止まっていました。
理由は、建設分野に固有の要件の多さです。建設業許可の確認、建設キャリアアップシステム(CCUS)への事業者登録、建設技能人材機構(JAC)への加入、そして国土交通大臣による特定技能外国人受入計画の認定。これらを在留資格の申請と並行して進める必要があり、しかも手続きの順序を誤ると後戻りが発生します。
ご相談時点で、人事総務のご担当者は1名。通常業務と兼務のため、要件の調査だけで2か月が経過していました。「秋の着工に間に合わせたいが、いつ人が入れるのか読めない」というのが最初のご相談内容です。
初回のオンライン相談で、着工日から逆算した工程表をその場で作成しました。ここで重要なのは「どの手続きが他の手続きの前提になっているか」を明示することです。たとえば受入計画の認定申請には、CCUS事業者登録とJAC加入の完了が前提になります。一方で、雇用契約書の作成と報酬水準の検証は、これらと並行して進められます。
1. 分野固有の要件を先行させ、申請書類は並行作成
着手初月にCCUS登録とJAC加入の手続きを完了させ、同時に当法人側で雇用契約書のひな型を作成しました。建設分野は月給制での報酬支払いが求められるため、既存の日給月給制の賃金規程との整合をどう取るかが最大の論点でした。同社の給与体系を維持したまま要件を満たす形に組み替え、就業規則の変更案まで含めてご提示しています。
2. 日本人技能者との報酬比較を、客観資料として整備
「日本人と同等以上の報酬」の立証は、審査で必ず確認されます。同社では、同等の職務内容・経験年数の日本人技能者の賃金台帳を抽出し、比較表を作成しました。この資料は受入計画の認定申請と在留資格申請の両方で使えるため、一度作れば工数が二重にかかりません。
3. 受入れ後の生活立ち上げを、入国前から準備
現場が東北にあり、公共交通機関の便が限られる地域だったため、住居の確保と通勤手段が実務上の最大のリスクでした。入国の2か月前から社宅候補の選定と自転車・原付の手配を進め、入国当日から通勤できる状態を整えています。
初回12名は全員が初回申請で許可となり、予定していた秋の着工に間に合いました。受入れ後は当法人が支援計画の全部委託を受け、3か月ごとの定期面談と四半期届出を継続しています。
受入れ1年後の定着率は12名中11名(1名は家庭の事情により帰国)。同社は翌年度に追加6名の受入れを決定し、現在は特定技能2号への移行を見据えた実務経験の記録整備を進めています。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 受入れまでの見通し | 時期が読めない状態が2か月継続 | 着手から3か月で申請完了・工程表で可視化 |
| 担当者の作業時間 | 月40時間程度(要件調査・書類収集) | 月12時間程度(意思決定と社内資料の提供のみ) |
| 四半期届出 | 未経験・対応方法が不明 | 期限2週間前にドラフト受領、確認のみ |
| 面談記録 | — | 3か月ごと。発言をほぼ逐語で共有 |
| 翌年度の計画 | 白紙 | 追加6名、2号移行の準備に着手 |
「いつ人が入るか」が言えるようになったのが大きい
最初の相談で工程表が出てきた時点で、社内の空気が変わりました。それまでは経営会議で「まだ調べています」としか言えなかったのが、「9月に12名、逆算すると6月に申請」と説明できるようになった。手続きそのものより、見通しが立つことの価値が大きかったです。
月給制への切り替えは正直、社内調整が大変でした。ただ、就業規則の変更案まで作ってもらえたので、労務担当と話す材料が揃っていた。ここを自力でやっていたら間に合わなかったと思います。